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ギフト通販業界で18年、MD・バイヤーとして1,000社以上の食品会社様とお取引を重ね、数々のヒット商品を手がけてきました。

今は、その知見を活かし中小食品会社様のギフト事業を“売れる形”にするお手伝いをしている内田です。

今日は、中小食品メーカー社長のための「価格競争」から脱出する、ギフトの「選ばれる付加価値」を設計する4つの柱についてお話しします。

「良い商品」が価格競争に巻き込まれる根本原因

中小メーカーの皆様から、「商品力には絶対的な自信があるのに、カタログやECサイトでは価格競争に巻き込まれてしまう」「毎年、新しいギフトセットを開発しても、リピートに繋がらない」といった悩みをよく聞きます。

ワイン、焼き菓子、スイーツ、タオルなど、高品質で魅力的な商品が溢れる現代のオンライン市場では、「うちの商品だけが持つ希少性」や「他にはない物珍しさ」といった、モノのスペック頼みの戦略は通用しなくなっています。

消費者はもはや「モノ」の価値だけで商品を選んでいません。単に「美味しい」「高品質」といった物理的な価値に頼るだけでは、競合と並んだ瞬間に価格競争に巻き込まれてしまうのです。

この記事でわかること

中小食品会社がこの競争から抜け出し、安定した売上とリピート率を手に入れるには、根本的な戦略の転換が必要です。

このコラムでは、あなたの会社で今扱っている「ありふれた商品」を、「特別な意味を持つ、選ばれるギフト」へと変貌させるための「贈り方設計」について、私の18年の経験に基づき、具体的な設計図(ロードマップ)を提供します。

これは、「モノ」を売る戦略から、「意味と体験」を売る戦略へとシフトするための、最も本質的な方法論です。


「モノから意味へ」の価値シフト

昨今、消費者がギフトを選ぶ際に重視する要素が、「価格・品質」から「贈る意味・ストーリー・体験」へとシフトしています。

ある調査では、ギフト購入者が重視する点として、「相手に喜んでもらえそうな特別感」が「商品の価格」を上回る結果が出ています。これは、単価が多少高くても、「自分の気持ちを託すのにふさわしい」と思える商品に価値を見出している証拠です。

では、なぜ、これほど良い商品を持つ中小メーカーが苦戦するのでしょうか?

それは、皆様が商品開発(モノの価値)に全力を注ぐ一方で、ギフトの本質である「贈り方設計」(意味と体験の価値)がおろそかになっているからかもしれません。

多くのメーカーで、以下の3つの課題が見受けられます。

  • ターゲティングの曖昧さ
    「誰にでも喜ばれるギフト」という曖昧な設計では、誰にも響かず、特別な価値が生まれていません。

  • 体験の欠如
    商品が届き、開封されるまでの「過程」が、感動ではなく、ただの「輸送」で終わってしまっています。

  • ストーリーの未活用
    商品背景にある作り手の想いや社会的な意義が、パッケージや販促物に反映されていません。

ギフトとは、感謝・祝福・応援など、目に見えない「感情」を託すための手段です。今、成果を出している商品は、この感情を届けるための4つの要素が緻密に設計されています。


「売れるギフト」を生み出す4つの“贈り方設計”の柱

誰にでもある商品を“売れるギフト”に生まれ変わらせるには、次の4つの柱を明確にし、深く掘り下げることが重要です。

4つの柱設計の目的
誰に向けて(贈る相手)ギフトの届け先を明確にする
どんなシーンで(贈る場面)ギフトの選ばれる理由を明確にする
どのように届け(贈る体験)届くまでの過程に感動を加える
どんな想いを込めるか(贈る意味)商品に独自のストーリーを付与する

柱1:「誰に向けて」を絞り込む

ギフトの価値は、「誰に贈られるのか」という設定によって劇的に変わります。曖昧な「友人」や「親戚」ではなく、贈られる人の具体的な感情に寄り添った設計を行いましょう。

【実践チェックリスト】

  • 「誰に」
    単なる「母親」ではなく、「遠方に住む、普段は連絡を取らない、健康を気遣う70代の母親」と絞り込めていますか?
  • 「送られる人のニーズ」
    贈られる人が、開封してすぐに「これは自分向けだ」と感じるような、パーソナルな要素(例:体調を気遣うメッセージ、好きな色)を反映できていますか?

  • 「贈る人の悩み」
    贈る人が「何を選んでいいか分からない」という悩みに対し、「失敗しない、センスが良いと思わせる、気遣いが伝わる」というコピーで応えていますか?


柱2:「どんなシーンで」を設計する

「いつ、どんな場面で贈られるのか」という(シーン)の設定は、購入のきっかけ、すなわち購買理由を明確にします。「お祝いギフト」という大枠から脱却し、より具体的な場面に焦点を当てましょう。

【実践チェックリスト:シーン設計の掘り下げ】

  • 「シーン」
    「結婚祝い」ではなく、「結婚式には参列できなかったが、後日改めて心ばかりのお祝いを送る」という具体的な場面を設定できていますか?

  • 「行動」
    そのシーンにおいて、贈り手がどのような行動を取りたいか(例:相手を驚かせたい、感謝を伝えたいが重荷になりたくない)という感情を捉えられていますか?

  • 「競合」
    設定したシーンにおいて、あなたの商品の競合となる商品が何か(例:結婚祝いなら現金の他、カタログギフトや花)を明確にし、それらより優れている点を強調できていますか?

柱3:「どのように届け」〜感動を生む“体験”の演出設計〜

ギフトは、モノだけでなく「体験」を届けるものです。商品を選んだ瞬間から、相手が開けて使うまでのすべての過程を設計しましょう。特に、開封の瞬間に、サプライズと感動を組み込むことが重要です。

有名な和菓子ブランドの「とらや」さんが選ばれ続けるのも、熨斗(のし)のカスタマイズや配送日時の指定によって、「心のこもった特別な贈り物」という体験を設計しているからです。

【実践チェックリスト:感動を生む「届け方」】

  • 包装
    単なる破損防止ではなく、箱を開けた時の第一印象が、そのシーンのためだけの「特別感」を演出できていますか?

  • メッセージ
    メッセージカードは単なる添え物ではなく、贈り手が言葉を選びたくなるような余白や、場面ごとの感謝・祝福の感情に合わせた例文を提案できていますか?(例:「上司への退職祝い」「友人への出産祝い」など、贈る人が迷わないよう具体的に)

  • 開封後
    商品を食べ終わった後に、パッケージを記念品として残せるような工夫(例:小物入れになる、メッセージが隠れている)がありますか?

柱4:「どんな想いを込めるか」〜商品の裏側にある“意味”の編集術〜

ギフトとは、「感謝・祝福・応援」といった「感情を託す道具」です。そのため、商品自体にどんな「意味」や「ストーリー」が込められているかが、他にはない選ばれる理由、すなわち「選ぶ理由の提供」になります。

【実践チェックリスト:ストーリーの編集】

  • 作り手の情熱
    「美味しい」だけでなく、「なぜ、この商品を、この製法で作るのか」という創業の原点や職人の哲学を、短い言葉で伝えられていますか?

  • 社会性・共感性
    商品の購入が、環境保全や地域振興、福祉支援といった「誰かの役に立つ」ポジティブな意味を内包していますか?(例:「この売り上げの一部は、〇〇な活動に使われます」)

  • 素材の物語
    ただの「国産」ではなく、「度重なる災害を乗り越えてきた、この土地の誇りである〇〇」といった、ドラマ性のある物語を伝えられていますか?

「なぜそれを贈るのか?」という問いに、最も感情的に響く答えを与えることこそが、あなたの商品の「意味」となります。この意味に共感した消費者は、価格競争に巻き込まれることなく、あなたの会社の商品を選び続けます。


FAQ(よくある質問)と専門家からのアドバイス


Q1:「贈り方設計」はコストがかかりすぎませんか?

A. 包装や配送にコストをかけるのは事実ですが、これは単なるコストではなく「ブランドへの投資」です。ターゲットを絞り込む(柱1)ことで、万人向けの安価な包装から脱却し、特定の顧客に響く一点豪華主義な設計に絞ることができ、結果的に費用対効果が高まります。価格競争に陥り、利益率が低下し続けるリスクと比べて、リピート率と顧客単価の向上で十分回収可能です。

Q2:ストーリーをどうやって伝えたら良いでしょうか?

A. 大切なのは、長文の文章ではなく、「五感に訴える表現」と「短いキャッチコピー」です。例えば、「このリンゴは朝焼けの中、職人が一つずつ手摘みしました」といった情景描写や、パッケージに「心を贈る」といった短い言葉を添えるだけでも、消費者の受け取り方は大きく変わります。また、商品のQRコードから、生産者の短い動画に飛べるようにすることも非常に効果的です。

まとめ【「何を売るか」ではなく「どう贈るか」

ギフト市場で成功を収める鍵は、「何を売るか」というモノの価値ではなく、「どう贈るか」という意味の編集と体験の提供にあります。

どの商品も似通っている今だからこそ、今回ご紹介した「贈り方設計」の4つの柱に沿って、あなたの会社の商品を深く見つめ直すことが、価格競争から抜け出す唯一の道です。この設計こそが、他社には真似できない強固なブランド価値を構築します。

【あなたの会社が今日からできる次のアクション】

  1. 「贈る相手とシーン」を、最も具体的に一つだけ設定してください。
  2. そのターゲットが「開梱する瞬間」に、どんな感情になって欲しいかを想像してください。
  3. このコラムで学んだことを活かし、まずは一つのギフトセットの「メッセージカード」を、徹底的に練り直すことから始めてみませんか。

「商品力には自信があるのに、なぜか売れない…」と感じているなら、答えはギフトとしての設計の中にあります。

「ギフト事業で思うように成果が出ない…」そんなお悩みをお持ちの中小食品会社の経営者の方へ

“今のギフト事業にどんな課題があるのか”を確認できる【ギフト課題チェックリスト】をご用意しました。



課題が見えることで、次の一手も明確になります。
未来の成果につなげるために、ぜひご活用ください。

今日も最後までお読みいただき
ありがとうございました。

あなたのビジネスがより多くの共感と成果
を生むことを、心より応援しています。