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ギフト通販業界で18年、MD・バイヤーとして1,000社以上の企業様とお取引を重ね、数々のヒット商品を手がけてきました。

今は、その知見を活かし食品メーカー様のギフト事業を“売れる形”にするお手伝いをしている内田です。


今日はギフト業界で長年バイヤーをしていた立場から、「ギフトで売れる商品」の条件について具体的にお話しします。

目次

売上を左右する「ギフト市場」への誤解

「味には絶対の自信がある」「原材料にも徹底的にこだわっている」――それなのに、「なぜかギフト商品として売上が伸びない」「営業してもバイヤーの反応が鈍い」

あなたは、今、自社の商品力と市場の評価の間に生まれる大きなギャップに悩んでいませんか?

多くの食品メーカー様は、「品質の良さ=良い商品」と考えがちです。確かに品質は最重要の大前提です。しかし、ギフトの世界では、「品質が良ければ売れる」という単純な方程式は通用しません。

実際、私が長年バイヤーとして見てきた中で、「自信作」として持ち込まれた商品の多くが、「ギフトとして選ばれるための設計」が決定的に欠けているため、商談後、どこにも採用されないという結果に終わっていました。

ギフト市場の「特殊性」を見誤っていませんか?

ギフト市場は、一般の通販市場とは根本的に構造が異なります。

  • 一般商品: 「使う人」が「自分のため」に購入する。
  • ギフト商品: 「贈る人(買い手)」が「受け取る人(使い手)」のために購入する。

ここに、中小メーカーが見落としがちな「贈る人の心理」という最大の壁が存在します。贈り手は、単なる商品ではなく、「自分のセンス」「相手への気遣い」「感謝の気持ち」を形にするために商品を選びます。

矢野経済研究所の調査によると、日本のギフト市場規模は2024年で11兆円を超える巨大市場であり、コロナ禍以降も「親しい関係性におけるコミュニケーション手段」として堅調に推移しています。この巨大な市場で成果を出すには、従来の「美味しいものを作る」という発想から、「贈られる理由を設計する」という発想への転換が不可欠です。

この記事でわかること

  1. 「贈る人の心理的ベネフィット」に基づいたパッケージや価格の設計方法がわかります。
  2. 自社の商品を「高単価ギフト」に昇華させるために必要な見栄えや体験価値の作り方がわかります。
  3. 「リピート購入」につながる顧客データの活用方法を学び、ギフト事業の収益性を高めるヒントが得られます。


なぜ「いい商品」がギフトで売れないのか?現状分析と構造的な問題

多くのメーカーが陥る「品質至上主義」の落とし穴

多くのメーカーは「味と品質さえ良ければ、あとはバイヤーや販売店が勝手にギフトにしてくれる」と考えがちです。

しかし、ギフトは「中身+付加価値(見栄え、体験、ストーリー)」で価格が決まります。通常商品と同じ土俵で考えてしまうと、以下のような構造的な問題に直面します。

  • 価格戦略のミス
    ギフト用パッケージ、のし対応、メッセージカードといった付加価値コストを無視し、通常商品と同じ価格設定にしてしまうため、ギフトとして必要な華やかさやサービスを付与できない。結果、競合の高単価ギフトに埋もれてしまいます。

  • 用途の曖昧さ
    「誰に、どんな目的で贈るのか」という贈答シーンが不明確なため、検索エンジンでの集客も難しく、販売員もお客様に提案しづらくなります。


贈る人が求める「4つの心理的ベネフィット」

贈り手がギフトを選ぶ際、最も重要視するのは「受け取る人の喜び」と、それによって得られる「贈り手自身の満足感」です。これを「心理的ベネフィット」と呼びます。

心理的ベネフィット贈り手が感じる感情
表現欲求「このギフトを通じて、私(贈り手)のセンスの良さを伝えたい」
安心欲求「失敗したくない。有名・人気なものを選んでおけば間違いがない」
承認欲求「相手から『気が利く』『センスが良い』と褒められたい」
優越感「他とは違う、少し珍しいものを贈って相手を驚かせたい」

あなたの商品のパッケージやウェブサイトは、この「贈る人の感情」を満たし、行動を後押しする設計になっていますか?


ギフトで売れる商品の3つの戦略的条件

長年の経験から、中小食品メーカー様がギフト事業を成功させるために見落とすべからず、いますぐ改善すべき3つの条件を解説します。

条件1:【贈答シーンの明確化】「いつ・誰に・なぜ」が伝わる商品名とパッケージにする

ギフト商品は、贈り手が「この商品を買う理由」を明確に感じられるように設計されている必要があります。

ターゲットを絞り、ギフトの「用途」を商品に刻み込む

  1. 「母の日」「内祝い」「季節の挨拶」など、具体的な贈答シーン(オケージョン)を明確に設定し、そのシーンに合わせた商品企画を行います。
    • 例: 「いつものお茶請け」→「長寿を願う、感謝の茶菓子セット(敬老の日向け)」
  2. 商品名やキャッチコピーに、そのシーンが連想される言葉を盛り込みます。
    • 例: 「美味しいプリン」→「遠方に住む家族へ、感謝を伝えるプレミアムプリン」
  3. パッケージデザインは、シーンの雰囲気に合わせます。内祝いならフォーマルに、カジュアルギフトならSNSでシェアしたくなるような華やかさを重視します。


条件2:【開封体験の最大化】「五感とストーリー」で贈り手の期待を超える

ギフトは「体験そのもの」です。贈り手は、自分が購入した商品が、相手に届き、開けた瞬間に「わぁ!」と感動される瞬間を想像して購入しています。

見栄えとストーリーで「価格以上の価値」を演出する

  1. 梱包とデザインへの投資:
    • 華やかなパッケージはもちろん、緩衝材の色や配置、商品の並べ方に至るまで、開けた瞬間に美しく見えるように設計します。
    • 化粧箱の質感や重厚感は、価格以上の高級感を演出し、贈り手の自己表現を後押しします。
  2. ストーリーを届けるリーフレット:
    • 商品と一緒に、「生産者のこだわり」「開発秘話」「美味しい食べ方(レシピ)」などを記載した上質なリーフレットや手書き風メッセージを同梱します。
    • これは、受け取った人(使い手)が「良いものをもらった」と感動すると同時に、リピート購入のきっかけを作る重要な販促ツール**になります。
  3. パーソナルな対応:
    • のし(御祝、内祝など)の選択肢は必須です。加えて、メッセージカードの無料サービスを提供することで、「気持ちを伝える」というギフトの本質的なニーズを満たします。(顧客満足度とリピート率の向上につながります。)

条件3:【リピート動線の設計】「贈られた人」を「次の買い手」にする仕組みを作る

ギフトは「一度売って終わり」ではありません。「贈られた人」は「次の贈り手」になる可能性を秘めた、最も熱量の高い潜在顧客です。

「受け取った人」を逃さない仕組み

  1. 同梱チラシ・カードの戦略的活用:
    • 受け取った人向けに、「あなただけのお礼クーポン(例:次回購入で使える10%OFF)」や「商品のストーリーをさらに深く知れる動画へのQRコード」を同梱します。
    • これは、ブランドロイヤルティ(愛着心)を高め、「このお店、センスがいいな。私も誰かに贈ろう」**というリピート動機を生み出します。
  2. SNSでのUGC(ユーザー生成コンテンツ)促進:
    • 開けた瞬間の「華やかさ」を意識したデザインにすることで、「#(自社ブランド名)ギフト」などのハッシュタグとともにSNSに投稿されやすくなります。これは、最も信頼性の高い口コミとして、新規顧客の獲得につながります。


FAQ(よくある質問)とチェックリスト

Q1. 通常商品とパッケージを分けるのはコストがかかります。本当に必要ですか?

A. 必要です。ギフトと通常商品を分けることで、以下のメリットが生まれます。

  1. 価格の維持:
    ギフトには「見栄え」や「安心感」という付加価値があるため、通常商品よりも高い価格帯を設定できます。
  2. 集客効果:
    「ギフト 〇〇(商品名)」といった検索キーワードでのSEO対策や、ギフト専用のLP(ランディングページ)での訴求が可能になり、ギフトを探している顕在層に確実にリーチできます。

Q2. 中小メーカーでもバイヤーに採用されるためのポイントは?

A. バイヤーは「売れる商品」しか採用しません。「味」はもちろん大前提ですが、以下の3つの提案要素を揃えてください。

  1. 明確なターゲットとシーン
    「母の日ギフトとして、30代後半の娘が、体調を気遣う母親へ贈る3,000円台の商品です」といった明確な提案。
  2. 他社との差別化
    「ストーリー(生産者の想いなど)」や「華やかな梱包」といった、御社にしかない付加価値を数値や具体例で提示する。

  3. 在庫・納期管理の明確化
    ギフトは季節性が高く、大量注文に対応できなければなりません。「安定供給できる生産体制」を具体的に示せることも、バイヤーにとって重要です。

売れるギフト商品になっているか?セルフチェックリスト

項目実行できているか?
戦略(贈る人目線)1. 「贈る人」の心理的ベネフィット(見栄え、安心感、センスの良さ)を満たす設計になっている。
2. 明確な贈答シーン(例: 快気祝い、お歳暮、カジュアルギフト)を設定し、商品名やパッケージに反映できている。
3. 通常商品と価格帯やパッケージを分け、ギフト専用商品として位置づけができている。
体験(受け取る人目線)4. 開封した瞬間、「わぁ!」と感動されるような華やかさ、商品の配置になっている。
5. のしやメッセージカードのオプションが充実しており、贈り手の「気持ちを伝える」手間を削減できている。
6. 商品だけでなく、生産者のストーリーや美味しい食べ方を伝える上質なリーフレットを同梱している。
リピート(事業目線)7. 受け取った人が、次の「買い手」になるためのリピートクーポンや特典を同梱している。
8. 「ギフト 〇〇」といった検索キーワードで、自社のECサイトやLPが上位表示されるように対策できている。


まとめ【売れるギフトは“設計”するもの】

「いい商品を作ったのに売れない」――それは、商品の質ではなく、「ギフトとしての設計」の問題です。

ギフトで売れる商品は、「贈る人の心理」を満たし、「受け取る人の期待」を超えるよう、緻密にデザイン(設計)されて初めて生まれます。

ぜひ一度、自社の商品を「贈られる理由」という視点で見直し、今日お伝えした3つの戦略的条件(シーンの明確化、開封体験の最大化、リピート動線の設計)に基づいて、改善を始めてみてください。

次の成功に向けたアクション

今回のコラムで、自社のギフト事業の現状について、新たな気づきや不安を感じた方もいらっしゃるでしょう。

そこで、今のギフト事業にどんな課題があるのか”を確認できる【ギフト課題チェックリスト】をご用意しました。

課題が見えることで、次の一手も明確になります。未来の成果につなげるために、ぜひご活用ください。


今日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

あなたのビジネスが一歩前に進むことを心から応援しています。