「この商品は、老若男女どなたにも美味しく召し上がっていただけます」

「ターゲットは?と聞かれれば、日本中のすべての家庭です」

もしあなたが、丹精込めて作った新商品を取引先に提案する際、あるいは自社サイトのキャッチコピーを書く際に、このように「間口の広さ」をアピールしようとしているなら、非常に危険です。

なぜなら、「誰にでも売れる商品」は、今の時代「誰にも刺さらない商品」と同義だからです。

私はこれまでギフト通販業界で10年以上、バイヤーとして1,000社以上のメーカー様と商談を重ね、膨大な数の「商品が選ばれる瞬間」と「切り捨てられる瞬間」を最前線で見続けてきました。現在はその知見を活かし、中小食品メーカー様のギフト事業を“売れる仕組み”へと再構築する伴走支援を行っています。

バイヤー時代、私は数えきれないほどの「ターゲットを広げすぎて自滅していく商品」をボツにしてきました。一方で、驚くほどニッチな、一見「そんな狭い市場で大丈夫?」と思える商品が、爆発的なヒットを記録する瞬間も見てきました。

いわば、「市場の奪い合い」の最前線で、どの言葉が消費者の財布を開かせ、どの言葉が無視されるのかを、嫌というほど見てきた人間です。

そこで痛感したのは、従業員30人以下の小規模メーカーが、大手の「全方位戦略」を真似した瞬間に、資本力と広告費の暴力に飲み込まれ、存在価値を失ってしまうという残酷な現実です。

「品質には自信があるのに、なぜか選ばれない」
「広告を出しても、クリックはされるが購入に繋がらない」
「結局、価格競争に巻き込まれて利益が削られていく」

そんな閉塞感を感じている経営者の方へ。今日は、なぜターゲットを広げることが「売れない」に直結するのか、その構造的な理由を解き明かし、小規模メーカーが特定の顧客に熱狂的に支持され、高単価でも売れ続けるための「絞り込みの戦略」をお伝えします。

この記事でわかること

1.「ターゲットを広げる」という善意が、なぜマーケティング上の致命傷になるのか、そのメカニズムがわかります。

2.大手企業と同じ土俵で戦わないための「ニッチ独占」の考え方と、具体的な絞り込みの基準が身につきます。

3.顧客が「これは自分のための商品だ」と確信する、具体的な共感設計のステップが理解できます。


「みんなに」は「誰にも」届かない:脳のフィルターを通過できない理由


現代の消費者は、1日に3,000件から1万件の広告情報にさらされていると言われています。情報の洪水の中で、私たちの脳は「自分に関係のない情報」を無意識にシャットアウトする高度なフィルターを持っています。

例えば、駅の雑踏の中で「みなさーん!」と叫ばれても、誰も振り返りません。しかし、「赤いネクタイをして、左手にコーヒーを持っているお父さん!」と呼びかけられたら、条件に当てはまる人は確実に足を止めます。

食品、特にギフトの世界でも全く同じことが起きています。

「美味しいお肉です」というメッセージは、雑踏の「みなさーん!」と同じです。 対して、「単身赴任で頑張る旦那様に、たまには自宅の味を思い出してほしい奥様へ。湯煎5分で完成する、実家の味を再現したハンバーグです」というメッセージはどうでしょうか。

ターゲットを広げるということは、メッセージの「解像度」を下げるということです。解像度が低い言葉は、消費者の脳のフィルターを通過できず、背景の景色として処理されてしまいます。

中小メーカーが生き残る道は、このフィルターを突破することにあります。そのためには、メッセージを尖らせる必要があり、尖らせるためには「誰に届けるか」を極限まで絞り込まなければならないのです。

中小メーカーが「ターゲットを広げる」と起きる3つの悲劇

「ターゲットを絞ったら、買ってくれる人が減ってしまうのではないか」 この恐怖心から、多くの経営者がターゲットを広げたがります。しかし、小規模メーカーがターゲットを広げた瞬間に、以下の3つの悲劇が確実に襲いかかります。

特徴が消え、価格競争の沼にハマる

ターゲットを広げると、あらゆる人の好みに合わせようとして、商品の特徴が丸くなります。

辛すぎず、甘すぎず、癖がなく、誰もが嫌わない味。

それは裏を返せば「これでなければならない理由」がないということです。

「これでなければならない理由」がない商品は、類似品との「スペック比較」や「価格比較」にさらされます。

資本力のある大手が安価に大量生産している商品と同じ土俵に引きずり出され、最後は10円単位の値引き合戦に巻き込まれます。

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広告効率が劇的に悪化する

今のネット広告(SNS広告や検索広告)は、ターゲットが明確であればあるほど、AIが「この商品に興味を持ちそうな人」を正確に見つけ出してくれます。

ターゲットを「30代〜60代の男女」と広く設定すると、広告費は分散し、クリックはされても「思っていたのと違う」という理由で離脱が増えます。

逆に「結婚内祝いに悩む30代の働く女性」と絞り込めば、クリック単価は上がったとしても、成約率(CVR)が飛躍的に高まり、結果として顧客獲得コストは下がります。

開発コストと在庫リスクが膨らむ

ターゲットが広いと、あれもこれもとバリエーションを増やしたくなります。

「甘党の人にはこれ」「ヘルシー志向の人にはこれ」とラインナップを広げた結果、包材の種類が増え、製造ラインは複雑になり、在庫の山を抱えることになります。

中小メーカーの強みは「機動力」と「集中」です。資源を分散させた瞬間に、利益率は確実に低下します。

バイヤーが「ターゲットは誰ですか?」と聞く本当の意図

私がバイヤー時代、新規メーカー様の提案を聞く際、必ず「この商品は、どんな方が、どんなシーンで、誰のために買うものですか?」と質問していました。

これに対し、「幅広い層に支持されています」と答えるメーカー様の商品を、私はほとんど採用しませんでした。なぜなら、「売れるイメージが湧かないから」です。

バイヤーの仕事は、商品を仕入れることではなく、商品を「売る」ことです。

「週末のちょっとした贅沢を楽しみたい共働き夫婦」

「お世話になった上司への外さないお返し」

「健康を気にする高齢の両親への贈り物」

百貨店やカタログ通販の誌面やサイトには、こうした「ターゲット」に基づいた売り場が構成されています。「誰でもいい」という商品は、どこにも居場所がないのです。

逆に、「これは、50代の男性が、お酒好きの友人と久々に再会する際の手土産として、絶対に自慢できる一品です」とまで言い切ってくれるメーカー様は、バイヤーにとって非常に心強いパートナーになります。その一言だけで、カタログのどのページに載せるか、どんなキャッチコピーを書くべきかが瞬時に決まるからです。

成功するための「ターゲット絞り込み」3ステップ

ターゲットを絞ることは、捨てることではありません。「最も喜んでくれる人を、一人決めること」です。以下の3つのステップで、あなたの商品の「真のターゲット」をあぶり出してみてください。

ステップ1:顧客の「不(負)」の感情を特定する

「美味しいものを食べたい」という正の欲求よりも、「困っている」「悩んでいる」「不安だ」という負の感情(不満・不便・不安)の方が、購買意欲は強力です。 あなたの顧客は、どんなことで困っていますか?

「贈り物選びで失敗して、センスがないと思われたくない」

「健康に気をつけたいが、味気ない食事は嫌だ」

「忙しくて料理をする暇がないが、子供には栄養のあるものを食べさせたい」

ステップ2:シーン(場面)を具体的に限定する

「誰に」が決まったら、次は「いつ・どこで」を決めます。

ターゲット:30代の働くママ

シーン:平日の夜、疲れ果てて帰宅した20時。子供はお腹を空かせている。でも出来合いの惣菜を出すのは罪悪感がある……そんな時の「10分で出せる、手作り感満載の主菜」

ここまでシーンを限定すると、自ずと商品のパッケージ、価格、伝えるべきメッセージが決まってきます。

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ステップ3:ターゲットが日常使っている言葉をリサーチする

ターゲットが決まったら、彼らが普段使っているSNSや口コミサイト(Amazonや楽天のレビュー)を徹底的に読み込みます。

メーカーが使う「こだわりの製法」「厳選された素材」という言葉ではなく、顧客が使う「これなら子供がパクパク食べた」「忙しい朝の救世主」といった「生の声」を、そのままキャッチコピーに採用してください。


FAQ(よくある質問)と専門家からのアドバイス

Q. ターゲットを絞りすぎると、市場が小さくなって売上が頭打ちになりませんか?

A. 日本全国を対象にすれば、1%のニッチ層でも100万人以上のターゲットがいます。従業員数名のメーカー様であれば、その1%を独占するだけで十分すぎるほどの売上が確保できます。むしろ、100%を狙って0.001%も取れない方が、経営のリスクは高いです。

Q. すでに複数の層に売れている場合はどうすればいいですか?

A. その場合は、商品ラインナップを分けるか、LP(ランディングページ)を入り口ごとに作り分けてください。「1つの入り口に、1人のターゲット」が鉄則です。すべての層を1つのページで満足させようとすると、メッセージが薄まり、結局誰も買わなくなります。

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Q. ターゲットをどうやって見つければいいか分かりません。

A. 最も確実なのは、今いるお客様の中で「最も自社の商品を愛してくれている人」にインタビューすることです。「なぜ、数ある中からうちの商品を選んだのですか?」「買う直前に、どんなことで悩んでいましたか?」という質問の答えの中に、真のターゲット像が隠されています。

まとめ【ターゲットを絞り、選ばれる存在になるための3つの要点】

「みんなに届けたい」という善意を捨て、特定の誰かの「たった一つの悩み」に応えること。それこそが、資本力を持たない中小メーカーが市場で主導権を握る唯一の道です。

今回お伝えした、ターゲットを広げずに「売れる仕組み」を作るための要点は以下の3つです。

1.「老若男女」という幻想を捨てる   「誰でもいい」は「誰でもなくていい」と同じ。脳のフィルターを突破するために、メッセージの解像度を極限まで高めること。

2.「負(不)」の感情から逆算する   「美味しい」というプラスの価値だけでなく、顧客が抱える不満や不安、不便を解決する「救世主」としてのポジションを確立すること。

3.シーンを限定して、バイヤーに売り場を想像させる   「いつ・どこで・誰が・誰のために」を明確に提示し、競合他社と比較されない「独自の居場所」を作ること。

モノが溢れかえり、消費者が情報の取捨選択をますます強める時代において、全方位戦略はもはや通用しません。

ターゲットを広げる恐怖を乗り越え、たった一人の「あなたがいい」という声に向き合う、強固なブランド作りを今日からはじめてください。

御社の「ギフト戦略」は、正しく設計されていますか?

「良いものを作っているのに、なぜか手元に利益が残らない……」

その原因は、現場の努力不足ではなく、「売り方の根本=ギフト戦略の設計」のどこかに、致命的な「ズレ」が生じているだけかもしれません。

今回お伝えした「ターゲット設定」の考え方はもちろん、「価格設定は適正か?」「独自の強みを言語化できているか?」といった、ギフトビジネスを成功させるために不可欠な10個の視点。これらを客観的に判定するための「ギフト課題チェック」をご用意しました。

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今日も最後までお読みいただき
ありがとうございました。


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