「新商品を開発した。原価計算もバッチリだ。あとは売るだけだ」

もしあなたが、今まさに新しい商品の発売を控え、原材料費に人件費、包材代を積み上げ、そこに一定の利益を乗せた「納得の価格」で商談に臨もうとしているのなら、少しだけ手を止めてこの記事を読んでください。

なぜなら、その「原価から逆算して価格を決める」という、一見正当に思える商売のやり方こそが、実は「最初から売れない(儲からない)商品」を生み出している元凶かもしれないからです。

私はこれまでギフト通販業界で18年間、バイヤーとして1,000社以上と商談をし、膨大な数の「商品が選ばれる瞬間」と「切り捨てられる瞬間」を最前線で見続けてきました。現在はその知見を活かし、中小食品メーカー様のギフト事業を“売れる仕組み”へと再構築する伴走支援を行っています。

いわば、「買い叩く側の論理」と「作って売る側の苦悩」の両方を、誰よりも現場で見てきた人間です。

そこで痛感したのは、従業員30人以下の小規模メーカーが、大手の「薄利多売の論理」である原価主義で戦おうとすると、どれほど努力しても手元に現金が残らないという残酷な現実です。

「一生懸命作っているのに、なぜか利益が出ない」
「取引先から原価を細かく突っ込まれ、結局値引きに応じてしまう」
「良い素材を使えば使うほど、首が回らなくなる」

そんな閉塞感を感じている経営者の方へ。今日は、原価率という数字の裏に隠された「売れない構造」を解き明かし、小規模メーカーが主導権を握って「言い値」で売るための戦略をお伝えします。


この記事でわかること

1 「原価+利益=販売価格」という計算が、なぜ中小メーカーを苦しめるのか、その構造的な理由がわかります。

2 バイヤーが原価を突いてくる際の「心理的ロジック」を理解し、それを封じ込めるための交渉の土俵の変え方が身につきます。

3 顧客が「その価格でも欲しい」と納得する「バリューベース価格設定」への移行手順と、利益率を最大化させるための具体的な設計図が理解できます。


なぜ「足し算」で決めた価格は、簡単に否定されるのか

まず、私たちが当たり前だと思っている「原価主義(コストプラス法)」の危険性についてお話しします。

多くの真面目なメーカーさんは、このように価格を決めます。 「原材料が300円、人件費が100円、包材が100円、経費が50円。合計550円だから、利益を150円乗せて、卸値を700円にしよう」

この計算式の最大の欠陥は、そこに「顧客が感じる価値」が1円も考慮されていないことです。

相手が持っている「値ごろ感」という名のまな板

私が支援現場でよく目にするのは、取引先から「この内容なら、普通はこのくらいの価格ですよね」と、勝手な相場観で判断されてしまう場面です。

相手は正確な原価を知らなくても、他社の類似品と比較して「A社はもっと安かった。お宅の700円は高いね」と、根拠の薄い比較を突きつけてきます。

原価やスペックをベースに価格を語ることは、相手が用意した「比較の土俵」に自ら上がり、「安さの競争」に招待状を出しているのと同じなのです。これでは、どんなに良いものを作っても主導権を握ることはできません。

現場で見た「利益が残らない商品」の共通点

私はこれまで1,000社以上の商談の場に立ち会ってきました。その経験から断言できるのは、利益が出ない負のループに陥っているメーカーには、驚くほど共通する「負のパターン」があるということです。

それは、努力が足りないからでも、味が悪いからでもありません。自ら「価値が低い」と誤解される隙を作ってしまっているのです。

「原価率が高い=良い商品」というサンクコストの罠

ある老舗メーカーの事例です。社長は「うちは最高級の原料を使っている。原価率は50%を超えている。だから良い商品なんだ」と胸を張っていました。しかし、その商品は地元のスーパーで、他社の量産品と並べて売られていたのです。

消費者は「単なる夕飯のおかず」としてその商品を見ています。隣の商品より100円高ければ、どんなにこだわりを説明されても買いません。社長は「こだわりが伝わらない」と嘆きますが、それは当然です。日常品の土俵で「プレミアムな原価」をかけても、それは顧客にとっての価値には変換されず、単なる「作り手の自己満足」で終わってしまうからです。

汎用資材による「価値の目減り」

利益の出ないメーカーほど、目に見えるコストである包材費を削ろうとします。資材メーカーから買ってきた既製品の箱、どこにでもあるようなラベル。しかし、これが致命的なミスとなります。

中身にどれほどコストをかけても、パッケージが「普通」であれば、顧客はそれを「普通の商品」として評価します。結果、原価が高いのに高く売れず、取引先からも「箱代を削って安くしろ」と言われる隙を与えてしまうのです。

「現場の小さなコスト」を計算に入れていない

小規模メーカーほど、発送の手間、資材の在庫管理費、あるいはギフト対応に伴う細かい人件費を「原価」に正しく含めていません。「社長や家族が動けばタダ」という計算で価格を決めてしまうため、売れれば売れるほど忙しくなり、手元に現金が残らない。これは経営を根底から揺るがす「積算のミス」です。

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「原価率の呪縛」を解き、高単価でも選ばれるための「価値設計」

では、どうすれば原価の呪縛から逃れ、適正な、あるいはそれ以上の利益を確保できるのでしょうか。答えは、「原価から計算する(足し算)」のをやめ、「顧客が感じる価値から逆算する(引き算)」ことです。

中小メーカーが生き残るための「(価値基準)」の設計法をお伝えします。

「原価の差」ではなく「悩みの深さ」に価格をつける

多くのメーカーは「希少な原料だから高い」と説明しますが、これはまだ原価主義の域を出ていません。

そうではなく、「その商品が解決する悩みの深さ」に価格をつけてください。

例えば、「引き出物で、親族に絶対に失礼があってはならない」という切実な悩みに対し、完璧な品質と包装、そして「安心」という物語を提供できれば、それは原材料費とは無関係な「解決費」として正当に評価されます。

パッケージを「コスト」から「付加価値の増幅器」に変える

100円の箱を150円の箱に変えることを「コスト増」と捉えるのは、積算の罠です。

ギフトにおいてパッケージは、中身の価値を2倍にも3倍にも引き上げる「投資」です。箱を開ける瞬間の高揚感、手に取った時の質感。これらを設計することで、原価率という数字の議論を無効化し、「この体験ならこの価格で当然だ」と納得させる土俵を作ります。

「安さ」を期待する客層を、あえて「捨てる」

原価ベースで価格を決めると、どうしても「相場より少し安くして売りやすくしよう」という誘惑に駆られます。

しかし、安さを基準に選ぶ客は、1円でも安い競合が現れれば即座に離れます。 「この価値を理解してくれる人だけに届ける」と決め、原価から計算した価格に「誇り(ブランド料)」を乗せてください。

客数が減っても利益が残る体質へ転換すること。これが積算の罠から抜ける唯一の道です。

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あなたの商品は「利益の出る設計」になっていますか?


仕組みを整えるために、まずは「積算の罠」にハマっていないか、以下の5つのポイントで自社をチェックしてみてください。

1 「原価率○%」という社内ルールが、商品開発のブレーキになっていませんか?

2 取引先に原価を細かく聞かれたとき、自信を持って「価値」の話にすり替えられていますか?

3 「中身のこだわり」と同じ熱量で、「外側の伝え方(箱・しおり・物語)」に投資できていますか?

4 社長や家族の「目に見えない労働力」を、タダだと勘違いして価格を決めていませんか?

5 「もし原材料が1.5倍になっても、このお客様は離れない」と言い切れる絆(ファン)を持っていますか?

もし一つでも不安があるなら、それは御社の技術が「安売り」という名の不当な評価にさらされているサインです。コストプッシュ型のインフレに勝つには、原価計算書を書き直すのではなく、戦略そのものを書き直す必要があります。

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FAQ(よくある質問)と専門家からのアドバイス

Q1:原価を無視して価格を決めると、暴利だと思われませんか?

A:暴利とは「価値がないものに高い金を取ること」です。あなたが魂を込めて作り、贈った人が涙を流して喜ぶような価値があるなら、それは正当な対価です。むしろ、利益を削って会社を疲弊させることこそ、未来の顧客に対する裏切り(継続不能)だと考えましょう。

Q2:資材にお金をかけると、さらに原価率が悪化してしまいます。

A:それは「今の販売価格」のまま資材を良くしようとするからです。100円の資材投資をするなら、販売価格は500円上げる。それがギフトの世界の常識です。資材はコストではなく、価格を上げるための「根拠」なのです。

Q3:小規模なうちが価格を上げたら、大手チェーンには相手にされなくなります。

A:それで良いのです。大手が求めるのは「安くて安定した大量生産品」であり、中小メーカーが戦う場所ではありません。御社が目指すべきは、数は少なくても「あなたのところの、これがいい」と言ってくれる、深い信頼に基づいた販路です。

まとめ【積み上げを捨てて主導権を握る3つの要点】

なぜ、素晴らしい技術を持ったメーカーが、倒産の危機や後継者不足に悩むのか。その根源には、真面目すぎるがゆえの「原価主義(積算の罠)」があります。

今回お伝えした「最初から売れない商品」を見極めるための要点は以下の3つです。

1.「原価+利益」の思考を捨てる
  取引先の顔色ではなく、贈る側の「喜び」の総量で価格を決定すること。

2.資材と物語を「投資」と捉える
   中身(原価)だけで勝負せず、体験価値を最大化させる外側にこそ知恵と資金を投じること。

3.比較の土俵から降りる
   スペック(数値)で語るのをやめ、御社にしか語れない「存在理由」を価格の根拠に据えること。

2026年、あらゆるコストが上昇するこの時代に、積み上げ式の価格設定はもはや通用しません。

今日から始めてください。原価積み上げを捨てて、お客様の「ありがとう」から逆算する新しい商売の形を。

御社の「ギフト戦略」は、正しく設計されていますか?

「良いものを作っているのに、なぜか手元に利益が残らない……」

その原因は、現場の努力不足ではなく、「売り方の根本=ギフト戦略の設計」のどこかに、致命的な「ズレ」が生じているだけかもしれません。

今回お伝えした「価格設定」の考え方はもちろん、「ターゲットは明確か?」「独自の強みを言語化できているか?」といった、ギフトビジネスを成功させるために不可欠な10個の視点。これらを客観的に判定するための「ギフト課題チェック」をご用意しました。

3分ほどの簡単なチェックで、自社では気づきにくい「売れない原因」や「改善の糸口」を可視化できます。

回答いただいた方には、私の18年の現場経験に基づき作成した「個別診断レポート」と「改善ヒント付きの無料小冊子」をメールでお届けします。

「今のやり方のどこに無理があるのか」「利益をしっかり確保するために、まずどこから手を付けるべきか」。2026年、納得のいく形でギフト事業を成長させるための第一歩として、まずは現状を客観視することから始めてみませんか?



課題が見えることで、次の一手も明確になります。
未来の成果につなげるために、ぜひご活用ください。


今日も最後までお読みいただき
ありがとうございました。

あなたのビジネスが成功することを
いつも応援しています。