「またも、利益を削って繁忙期を終えてしまった……」

もしあなたが、12月の出荷のピークを終えて、心地よい達成感よりも「来年はどうすればいいのか」という漠然とした不安を感じているのなら、この記事はまさにあなたのためのものです。

せっかく良いものを作っているのに、原材料や人件費の高騰分を卸値に反映させようとすれば「それなら他社に変えるだけだ」と暗に突き放される。

バイヤーからは厳しい掛け率を提示され、飲み込まざるを得ない。売上は立っていても、手元に残る利益は薄く、会社を存続させるための投資すらままならない。

そんな現状に、心の底から危機感を感じていませんか?

私はこれまでギフト通販業界で18年間、バイヤーとして1000社以上と商談をし、膨大な数の「商品が選ばれる瞬間」と「切り捨てられる瞬間」を最前線で見続けてきました。現在はその知見を活かし、中小食品メーカー様のギフト事業を“売れる形”に再構築するお手伝いをしています。

いわば、「買い叩く側の論理」と「作って売る側の苦悩」の両方を、誰よりも現場で見てきた人間です。

そんな私が今、多くの支援現場で直面しているのが、「味は間違いなく良いのに、なぜか安く叩かれてしまう」という経営者の方々の悲痛な叫びです。

なぜ、あなたの魂を込めた商品は、バイヤーの提示する「掛け率」の前に無力化されてしまうのか。

今日は、中小食品メーカーが知らず知らずのうちに陥っている「構造的な罠」と、そこから脱却して利益を確保するための具体的な解決策を、現場の生々しい事例を交えながら徹底的に解説します。

目次


この記事でわかること

1  バイヤーから提示される「掛け率」の交渉で主導権を握れない根本的な原因と、価格競争の土俵から降りるための「価値の翻訳術」がわかります。

2  利益を削り続けてしまうメーカーが共通して陥っている「3つの盲点」を理解し、自社のブランド力を販路に依存させないための戦略的な思考法が身につきます。

3  原価からの積み上げではなく、顧客の心理から逆算する「バリューベース価格設定」の具体的なステップと、プレミアムギフトとして再構築するための「5つの鉄則」を理解できます。

なぜ、あなたの商品は価格で比較されるのか

まず、冷徹な事実を直視しなければなりません。

バイヤーとの商談で「掛け率」の調整ばかりが議題に上がるのは、あなたの商品の品質が悪いからではありません。その商品が、バイヤーの頭の中で「代替可能なコモディティ(日用品)」のバケツに入れられてしまっているからです。

価値が「翻訳」されていないという致命的ミス

多くのメーカーは、商談で「創業100年です」「この希少な素材を使っています」「職人が手作りしています」と語ります。しかし、これらはすべて「作る側の理屈(プロダクトアウト)」です。

バイヤーや消費者が本当に知りたいのは、その「こだわり」が、自分たちのどんな課題を解決し、どんな利益をもたらすのかという一点です。

特にギフト市場において、この「価値の翻訳」の失敗は致命的です。ギフトは「自分で食べるもの」ではなく「誰かに贈るもの」です。贈る側には、「相手にセンスが良いと思われたい」「感謝を伝えたいが、失礼があってはいけない」という切実な心理的ニーズがあります。

ここを無視して「素材の良さ」だけを伝えていると、バイヤーは「あ、これと同じような商品は他社にもあるな。じゃあ、より安い方(掛け率の良い方)を選ぼう」という思考回路になります。これが、あなたが納得のいかない条件に飲み込まれる最大の原因です。

現場で見た「利益を削るメーカー」の共通点

私は、これまで大手ギフト会社のバイヤーとして1,000社を超えるメーカーを「選別」する立場にありました。

そして現在は、その経験を活かし、当時は選ぶ側だったからこそ見えていた「選ばれる構造」を、メーカー側から支援する立場として現場に立っています。

その経験から断言できるのは、利益が残らず苦しんでいる会社には、「驚くほど共通する負のパターン」があるということです。

それは、努力が足りないからでも、味が悪いからでもありません。「バイヤーが価格を叩きやすくなってしまう隙」を、知らず知らずのうちに自ら作ってしまっているのです。

ここからは、私が現場で目撃してきた「利益を削り続けてしまうメーカー」に共通する、3つの致命的な盲点を詳しくお伝えします。

「看板」への過度な依存と、主導権の喪失

ある老舗和菓子メーカーの事例です。

長年、某有名百貨店のギフトカタログに掲載されることを誇りにしていました。

しかし、数年前からのコスト高騰で卸値の改定を申し出た際、バイヤーから返ってきたのは非情な言葉でした。

「今の価格で維持できないなら、次のカタログからは外します。他に入れ替わりたいメーカーは山ほどいますから」

社長は、看板を失うことを恐れて条件を飲みました。その結果、繁忙期になればなるほど、人件費と送料で利益が溶けていく「赤字の行列」を作ることになったのです。これは、自社の価値を「販路のブランド力」に委ねてしまった代償です。

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10年前から変わらない「汎用パッケージ」の限界

「中身が良ければ、箱なんて簡素でいい」という考え方は、ギフトビジネスにおいては「利益を捨てる」と言っているのと同じです。

多くのメーカーが、資材メーカーから買ってきた既製品の箱に、包装紙を巻いて出荷しています。

これでは、中身がどれほど高級でも、見た目の価値は「相場」の中に埋もれます。見た目が「普通」であれば、掛け率も「相場の範囲内」でしか交渉できなくなります。

「現場の小さな気づき」を商品に反映できていない

例えば、ある食品メーカーさんでは「法事のお返し」として長年愛されている商品がありました。

しかし、現代の住宅事情や家族構成の変化により、「大きすぎる箱」や「日持ちの短さ」が、実は顧客の負担になっていることに気づけていませんでした。

現場でお客さんの声を聞き、「今の時代に合わせたサイズ感や日持ち」に微調整するだけで、無理な価格交渉をしなくても「これが欲しかった」と選ばれるようになります。こうした「顧客の不便の解消」こそが、プレミアム化への第一歩なのです。


あなたの商品をプレミアム化するための「5つの鉄則」


買いたたかれる現状を打破し、利益ある商品に変えるためには、単なる「値上げ」ではなく「価値の再構築」が必要です。

価値の「核」を抽出し、比較不能な物語を添える

あなたの会社が当たり前だと思っていることにこそ、宝が眠っています。

「素材」や「製法」をスペックとして語るのではなく、「なぜその土地でなければならないのか」「その職人の技術が、贈られた人にどんな感動を与えるのか」といった、比較不能なストーリーを言語化してください。これが、バイヤーの掛け率交渉に対する最強の防波堤になります。

ターゲットを「絞り、絞り、絞り抜く」

「お世話になった人へ」という広いターゲット設定は、最も競合が多く、価格競争に巻き込まれやすい領域です。

「定年退職する恩師へ、教え子たちが連名で贈る一品」といった具合に、シーンを極限まで具体化してください。

ターゲットが絞られるほど、価格は「敬意の重さ」として正当化され、他社と比較される余地がなくなります。

価値の「伝え方」を共感設計で再構築する

スペックを語るのをやめ、心に届く「物語」を設計しましょう。パッケージも、単なるコスト(資材)ではなく、ブランドを体現する「投資」です。

箱を開けた瞬間の「体験価値」を設計してください。中身の品質が同じでも、この「伝え方」の差だけで、商品は全く別の価値を持ち始めます。

価格設定の基準を「原価」から「価値」へシフトする

「原価+利益」で価格を決める思考(コストプラス法)を一度捨ててください。

「そのギフトによって、贈る側と受け取る側の関係性がどう良くなるか」という価値から逆算した価格設定(バリューベース法)へ移行しましょう。

バイヤーに納得させるのは、原価計算書ではなく、その価格でも顧客が喜んで買うという「根拠あるストーリー」です。

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販路の主導権を握り、自社に「決定権」を戻す

特定の卸先に依存せず、自社EC(直販)を強化して「直接顧客と繋がる」基盤を持ってください。

「自社のサイトではこの価格で、これだけ熱狂的なファンに支持されている」という実績は、卸先との商談における最強の武器になります。


あなたの商品は「利益が出るギフト」になっていますか?

仕組みを整えるために、まずは現状を冷静に見つめ直す必要があります。以下の5つの質問に、心の中で答えてみてください。

1.他社の同等品と並べられたとき、「価格以外」で選ばれる理由を明確に言えますか?

2.その商品は、贈られた人が思わずスマホで写真を撮って、誰かに自慢したくなるような演出がされていますか?

3.「お歳暮・お中元」以外の、通年で売れるギフトシーンを3つ以上確立していますか?

4.昨今のコスト高騰に対して、自社の主導権で「価値に見合った価格改定」ができていますか?

5.売上の大半を、特定の1〜2社の卸先に依存していませんか?

もし、一つでも「自信がない」と感じる項目があったなら、それは伸びしろがあるという証拠です。同時に、今のままでは2026年も「利益なき繁忙期」を繰り返すリスクがあるという警告でもあります。

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FAQ(よくある質問)と専門家からのアドバイス

これまで多くのメーカーさんと向き合う中で、よくいただいた質問にお答えします。

Q1:価格(卸値)を上げようとすると、バイヤーに「他社に変える」といわれます。

A:それはあなたの商品の「代わり」が他社にいると思われているからです。まずは商品の「独自性」を一点突破で磨き、そのバイヤーにとって「外すと自社の損失になる(他店に客を取られる)」存在を目指すのが、急がば回れの解決策です。

Q2:小規模メーカーだと、ブランド化には莫大な広告費が必要ではないですか?

A:いいえ、逆です。今の時代、SNSや自社サイトを駆使すれば、広告費をかけずに「特定の人に深く刺さるブランド」は作れます。大手が狙えないニッチな悩み(ギフトシーン)を狙うのが小規模メーカーの必勝法です。

Q3:既存の包装紙や箱の在庫が大量にあります。これらを使い切るまでリニューアルは待つべきですか?

A:在庫を消化するために「売れない(利益の出ない)状態」を続けるコストの方が、資材を廃棄するコストより遥かに高いです。まずは一部の「限定商品」からテストマーケティングとして新しい資材を導入することをお勧めします。

Q4:ギフト特化にするために、今の主力商品を大きく変える必要がありますか?

A:いいえ、中身を無理に変える必要はありません。多くの場合、変えるべきは「容量」「詰め合わせの組み合わせ」「パッケージ」「同梱するしおり」といった「見せ方」と「伝え方」です。

Q5:何から手をつけていいか、社内に専門の人間がいません。

A:全てを内製化する必要はありません。戦略の構築は私のような専門家の知見を活用し、現場での運用を自社で回せるようにする「仕組みづくり」が、結果的に最もコストパフォーマンスが良いです。

まとめ【買いたたかれないための3つの要点】

なぜ素晴らしい商品が安く叩かれてしまうのか、その構造的な理由と対策をお伝えしてきました。最後に、あなたが明日から取り組むべき要点を3つにまとめます。

1.「スペック」から「ストーリー」への転換 、原材料や製法という「作る側の理屈」で語るのをやめ、その商品が「贈る側のどんな悩みを解決し、どんな喜びを生むか」という価値の翻訳を行うこと。

2.ターゲットの絞り込みによる「比較不能」なポジション作り 誰にでも売ろうとせず、特定のギフトシーン(例:退職祝い、法事など)に特化することで、他社との価格比較という土俵から降りること。

3.販路に依存しない「価格決定権」の確保 特定の卸先に売上を依存せず、自社ECなどの直販チャネルを通じて顧客と直接繋がることで、適正な価格で販売できる基盤を整えること。

「良いものを作れば売れる」という時代は終わりました。

これからは、その価値を正しく設計し、伝えるための「売れる仕組み」を持っているメーカーだけが、利益を出し、永く生き残ることができます。

「買いたたかれる取引」を終わらせるために。まずは自社の「ギフト設計」を客観的に診断しませんか?

「良いものを作っているのに、正当な価格で売れない……」

そのもどかしさを解消するために必要なのは、さらなる品質向上ではなく、「売るための戦略(設計図)」の見直しかもしれません。

今回お伝えした「5つの鉄則」を自社にどう当てはめるべきか、その具体的な手がかりを掴んでいただくために、「ギフト課題チェック」をご用意しました。

このチェックシートは、商品そのものではなく、「売り方の根本=ギフト戦略の設計」が今の自社にどの程度備わっているかを可視化するものです。

3分ほどで終わる10個の質問に直感的に答えるだけで、以下のような気づきが得られます。

・改善すべき「利益の漏れ口」が一目でわかる
・自社の商品が、本当にギフトとして勝ち筋があるかを判断できる
・自己判断では気づけなかった“売れない本当の原因”が明らかになる

ご回答いただいた方には、私の18年のバイヤー経験と支援実績に基づき、個別の診断レポートと「改善ヒント付きの無料小冊子」をメールでお届けします。

「チェックしただけで、自社の弱点がはっきりした」「次の一手が見えた」というお声もいただいています。「選ばれるブランド」への転換点にするために、まずは現状を客観的に把握することから始めてみませんか?


課題が見えることで、次の一手も明確になります。
未来の成果につなげるために、ぜひご活用ください。

今日も最後までお読みいただき
ありがとうございました。

あなたのビジネスが成功することを
いつも応援しています。