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ギフト通販業界で18年、バイヤー・商品企画として1,000社以上の食品会社様とお取引を重ね、数々のヒット商品を手がけてきました。

今は、その知見を活かし中小食品会社様のギフト事業を“売れる形”にするお手伝いをしている内田です。

今日は「既存店舗の資産をフル活用し、リスクなく新たなギフトブランドを小さく始める戦略」と、失敗しないための重要ポイントについてお話しします。

目次

売上減少の不安を「ギフト」で希望に変える

「長年、地域のお客様に愛されてきたけれど、ここ数年売上が少しずつ落ちてきた。客足が戻らず、漠然とした不安がある」

「新たな収益の柱が必要だが、大規模なECサイト開設や新ブランド立ち上げは在庫や資金面でリスクが大きすぎる」

「今の店舗やスタッフというリソースを活かして、小さくても高利益な事業を始めたい」

もしあなたが、こんな「将来への不安」と「次の打ち手への迷い」を抱えているなら、その悩みは多くの堅実な店舗経営者が直面している共通の課題であり、まさに行動を起こすべきサインです。

中小事業者が、店舗の売上減少を補おうと、いきなり大規模なECモールに出店したり、市場ニーズを無視した新商品を開発したりするのは、非常に危険です。私が長年見てきた成功例は、常に「今ある資産」をテコ(梃子)にして、リスクを最小化することから始まっています。

既存の店舗資産こそが「高利益ギフト」の種である理由

多くの事業者が、新たなブランドを始める際に「ゼロから集客」しようと、多額の広告費やシステム費用を投じて失敗します。しかし、あなたはすでに「信頼」という、何億円もの広告費でも買えない最大の資産を持っています。

特にギフト事業は、「誰でも良いから買ってくれる」お客様ではなく、「この商品なら安心して気持ちを伝えられる」という信頼を求めるお客様が中心です。

このコラムでは、私の18年間の知見に基づき、「店舗」を「ギフトブランドのテストキッチン」として活用し、広告費をかけずに確実に高利益なギフト事業を立ち上げるための具体的な道筋をお伝えします。これは、売れないリスクを極限まで減らすための、最も現実的な戦略です。

この記事でわかること

  1. 既存店舗の売上データや常連客の声を、「売れるギフト商品」の企画に直結させる具体的なリサーチ手法と分析の視点がわかります。

  2. 新しいブランドを立ち上げる際の初期投資を最小限に抑え、在庫リスクを徹底的に管理するスモールスタートの実行手順と資金計画の立て方が明確になります。

  3. 常連客を新しいギフトブランドの「最初のファン」に変え、口コミと確実なリピートを生むための効果的なプロモーション戦略とデジタルツールの活用法を習得できます。


なぜ店舗売上の減少を「ギフト」が補うのか?

店舗売上減少の構造的な原因と「ギフト」の特殊性

店舗の売上が減少する原因は、多くの場合、お客様の「消費行動の変化」と「市場の分散化」という構造的な問題にあります。

  1. 「目的買い」志向の強化
    お客様は、日常的な買い物においては、価格と利便性を優先し、低価格な大型店や大手ECで買う傾向が強くなりました。目的の商品以外を「ついで買い」したり、「なんとなく立ち寄る」機会が激減しています。

  2. 情報の分散とコモディティ化
    良い商品も、インターネットやSNSによってすぐに情報が広がり、「どこでも買えるもの」という認識になりやすい、いわゆるコモディティ化(汎用品化)の波にさらされています。

この問題に対して、ギフト(贈答品)は全く異なる性質を持っています。私は、ギフト市場を「感情的価値の市場」と呼んでいます。

  • ギフトは「感情の補完」
    ギフトは、「誰かに気持ちを伝える」ことが最大の目的です。この感情的価値には、「価格」が介入しにくく、売場の賑わいや低価格に左右されません。

  • 「失敗したくない」という切実なニーズ
    贈る人は「失敗したくない」という不安が非常に強いため、価格よりも品質の確実性や商品の背景にあるストーリーを重視します。この「安心・確実性」こそが、あなたが長年店舗で築いてきた「信頼」と直結します。

つまり、あなたが持つ「商品のこだわり」と「お客様からの信頼」という資産は、マス市場では「割高な理由」になっても、ギフト市場ではそのまま「高付加価値な、選ばれる理由」になるのです。

ギフトブランド立ち上げの「スモールスタート」が成功する根拠

新しいギフトブランドを既存リソースを活用したスモールスタートで始めるのが、最もリスクが低く、高確率で成功する方法であることは、私のこれまでの経験からも確信を持ってお伝えできます。

  1. 究極のMVP(最小実行可能製品)
    新しいECサイトの立ち上げではなく、既存店舗の片隅を「ギフト専門コーナー」として活用し、「店頭での予約販売」から始めることで、無駄な開発費や広告費を一切かけずに、市場の反応をテストできます。

  2. 既存の信頼を「担保」にする
    新ブランドであっても、「あの店が、自信を持って始めた新しいギフト」というだけで、すでに高い信頼性が担保されます。これは、ゼロから立ち上げたEC専業店が多額の資金を投じても、何年もかけても得られない最大の強みであり、ブランド構築の初期コストを劇的に下げます。

  3. キャッシュフローの健全性
    既存店舗のスタッフや設備を流用し、店頭での予約販売から始めることで、無駄な在庫を抱えることなく、お客様からの入金を確認してから製造・手配するという、キャッシュフローの健全な状態で事業をスタートできます。



既存リソースを活かす「ギフトブランド」立ち上げ3ステップ

新しいギフトブランドを成功させるために、既存の店舗資産を最大限に活用する具体的な3つのステップをご紹介します。

ステップ1:既存顧客の「声」から売れるギフトを企画する(高精度リサーチ)

新ブランドで何を売るか、その答えは「あなたがすでにお持ちのデータ」の中にあり、それは「売上データ」と「お客様の生の声」の二つです。

「常連客が何を贈っているか」をデータで掘り起こす

  • 過去1〜2年間のPOSデータや顧客リスト(会員情報)を分析し、「どんなお客様が、どんな商品を、どれくらいの頻度で、何個購入しているか」を調べます。特に、以下の3つの購買行動に注目してください。
    • (A) 単価が高くても、毎回まとめて購入する商品
      これは、「誰かに贈るため」に購入されている可能性が高いです。

    • (B) 遠方からの注文、または地方への配送履歴が多い商品
      「帰省土産」や「特定の人への贈り物」として利用されています。

    • (C) 季節の変わり目に急に売れる商品
      「時候の挨拶」としてのギフト需要が考えられます。
  • 企画への活用
    これらの行動から浮かび上がった商品こそが、新ブランドの最初のギフト商品として最も成功しやすい「核」です。これをベースに、ギフト専用パッケージやストーリーを付加することで、高単価商品へとブラッシュアップします。

「売場でのお客様の言葉」を言語化する

  • スタッフ全員に、お客様が商品を選ぶ際に言った「なぜこれを選ぶのか」という具体的な理由(例:「病気のお見舞いに、添加物のないものを探していて」「アレルギーを持つ孫へのプレゼントに安全なものを」)を、メモや日報に記録してもらいます。

  • 企画への活用
    この生きた言葉は、単なる商品名ではなく、新ブランドの「コンセプト」や「キャッチコピー」になります。「お見舞いでも安心!無添加の〇〇ギフト」のように、お客様のニッチなニーズ(感情)に特化したメッセージが完成します。ターゲットを絞り込む勇気が、このステップでは重要です。

ステップ2:既存店舗を「テストマーケティングの場」にする(最小リスク実行)

新ブランドの販売を、いきなり外部のプラットフォームで始めるのは、多額の機会損失と在庫リスクを伴います。まずは既存の店舗と顧客を対象に「限定販売」からスタートします。

「3つの限定」で関心を高める

新ブランドのギフト商品を、以下の限定条件で販売します。これは、「この店だけの特別な情報」として常連客の関心とロイヤリティを高める手法です。

  • 期間限定
    「次の母の日までの2週間限定の先行予約」など、期間を区切り、「買えるタイミングの希少性」を演出する。

  • 顧客限定
    「VIP会員様限定の先行予約」として店頭とメールマガジンでのみ告知。

  • リスク管理
    在庫は先行予約数分しか製造しないため、過剰在庫のリスクをゼロにできます。この確実な販売実績をベースに、製造ロットを決定します。

「店頭で完結する」フィードバック収集の徹底

  • ギフトを購入した常連客に、「新しいブランドについて、ぜひご意見を聞かせてください。あなたの声が、このブランドを育てます」と声をかけ、専用のアンケートハガキやQRコードを渡します。アンケート内容は、「パッケージの見た目」「価格への納得感」「贈った相手の反応」など、ギフトならではの質問に絞り込みます。

  • 効果
    生きたフィードバックが即座に集まるため、新ブランドの方向性を低コストで迅速に修正できます。このデータは、本格的なEC展開へ移行する際の「確かな証拠」となり、「お客様と一緒に作ったブランド」という強いストーリーを生みます。

ステップ3:既存の「信頼」をデジタルの「拡散力」に変える(ファン育成と販路拡大)

既存顧客から得た「確かな実績」と「ポジティブな声」**を最大限に活用し、広告費をかけずにオンラインでの認知を広げます。

「お客様の声」をそのままブランドの顔にする

  • ステップ2で集めた常連客のポジティブな感想を、「○○様(イニシャル可)からの贈り物」といった形で、新ブランドのECサイトやSNSのトップに掲載します。「ご近所の〇〇さんに贈ったら、すごく喜ばれた」という地域に根ざした声は特に説得力があります。
  • 効果
    新しいお客様は、「この店を信頼している常連客がいる」という事実に強い安心感を抱き、購入へのハードルが一気に下がります。これは、信頼をゼロから築く広告よりも遥かに効果的です。

「お礼」を次の「購入機会」に変える

  • ギフトを購入してくれた常連客には、「新ブランドを広げてくれてありがとう」というメッセージとともに、「次回、新ブランドを贈る際に使える割引クーポン」や「店舗での限定試食会への招待状」を渡します。

  • 効果
    「この店を応援したい」というロイヤリティが強化され、リピート購入と口コミによる新規顧客獲得が同時に実現します。この「既存顧客を次のマーケターにする」仕組みこそが、スモールスタートにおけるLTV(生涯顧客価値)最大化**の鍵です。

失敗しないためのスモールスタートチェックリスト

このスモールスタート戦略を実行する前に、以下の項目をチェックしてください。

  1. 新ブランドのターゲットは、「誰でも」ではなく「(既存顧客から見つけた)特定の誰か」の深いニーズに基づいていますか?

  2. 新ブランドの商品は、「既存の主力商品1〜2点」をベースにギフト専用に高付加価値化されていますか?

  3. 最初の販売は、「常連客限定の先行予約」など、「限定」を使ったリスクの少ない方法でスタートしますか?

  4. 店頭での販売時に、必ず「新ブランドの感想」を収集する仕組みを用意していますか?(アンケート、QRコードなど)

  5. 集まったお客様の声を、新ブランドのECサイトやSNSのトップでアピールする準備ができていますか?



FAQ(よくある質問)と専門家からのアドバイス

Q1:新ブランドのECサイトは、既存のECと分けるべきですか?また、初期費用は?

A:初期は特設ページで十分ですが、成功後は分けるべきです。費用は数万円から可能です。

初期のテスト段階では、既存のECサイトやホームページ内に「新ギフトブランドの特設予約ページ」を設けるだけで十分です。これにより、システム投資を抑え、既存顧客もアクセスしやすくなります。この程度の改修であれば、ほとんどのECプラットフォームで数万円程度の予算で対応可能です。

しかし、テストが成功し、本格的に展開する際は、「新ブランド専用のサイト」を設けることを推奨します。なぜなら、ギフトと日常の買い物では、お客様の心理や期待する世界観が全く異なるからです。サイトを分けることで、ギフトブランドとしての専門性が高まり、客単価の向上に繋がります。

Q2:スタッフの業務が増えるのが心配です。どうすれば?

A:業務を「ギフトの専門家」育成のための投資と捉え、ルーティン化と分業を進めてください。

新ブランド立ち上げで業務が増えるのは避けられません。しかし、ギフトのスモールスタートは、「どの商品が、どんなお客様に売れるか」を現場のスタッフが直接学ぶ最高の機会です。

  • 分業の徹底
    「フィードバック収集担当」「梱包・ラッピングのプロ担当」など、業務を付加価値の高い業務に絞り込み、担当者を固定します。

  • マニュアル化
    ギフト梱包や発送の作業を徹底的にマニュアル化し、誰でも高い品質を保てるようにします。

  • 専門性付与
    スタッフには、「あなたはギフトのプロフェッショナルになる」という意識付けをしてください。この専門性は、今後の店舗とEC両方の成長に不可欠な資産となります。


Q3:既存顧客から始める戦略だと、新規顧客が増えませんか?

A:ギフトは「既存顧客」から「新規顧客」への紹介が最も強い市場です。

通常の食品ECでは広告が新規顧客獲得の主軸ですが、ギフトは「信頼の紹介」が主軸です。

既存顧客が「あの店の新しいギフトを贈ったら、とても喜ばれた」という成功体験を持つことで、その「受け取った側(新規顧客)」が、「今度は自分も贈りたい」とあなたのブランドに辿り着きます。つまり、既存顧客から始める戦略こそが、最もコスト効率の高い新規顧客獲得戦略なのです。「安心の輪」を広げる意識を持ってください。


まとめ【店舗は「最強のテストマーケティング施設」】

本記事では、店舗事業者がリスクを最小限に抑え、新たなギフトブランドを立ち上げるための3つのスモールスタート戦略を解説しました。

  • ステップ1:既存顧客の「声」から売れるギフトを企画する
  • ステップ2:既存店舗を「テストマーケティングの場」にする
  • ステップ3:既存の「信頼」をデジタルの「拡散力」に変える

あなたの既存店舗と長年の常連客は、何億もの広告費をかけた市場調査よりも価値のある「最強のテストマーケティング施設」です。この資産を活かし、最小のリスクで高収益なギフト事業を次の柱として築いてください。

あなたのギフト事業の「成功の土台」を明確にする次なるアクション

しかし、「既存のお客様のデータから、具体的にどんなギフトが生まれるのか?」「今のリソースでどこまでできるのか?」といった具体的な戦略を立てる前に、ギフト事業の「現在の強度」を客観的に測っておく必要があります。

このチェックリストは、ブランドの規模に関わらず、あなたの会社がギフト事業を成功させるための土台(ターゲット、用途、強み)が明確になっているかを客観的に把握するのに役立ちます。

もし、あなたの会社が新たな販路としてギフト事業の立ち上げに課題を感じていらっしゃるなら、現状を客観的に把握できる無料チェックリストをご活用ください。


課題が見えることで、次の一手も明確になります。未来の成果につなげるために、ぜひご活用ください。

今日も最後までお読みいただきありがとうございました。

あなたのビジネスが成功することをいつも応援しています。